「」さんのページ

総レビュー数: レビュー(全て表示) 最終投稿: まだ投稿されていません。

 いきなり失踪してしまった幼馴染の早川さん。霊感のある主人公はなぜかその早川さんの霊に付きまとわれることになるのだった。

 で、そんなこんなで主人公はどんどん怪奇な事件に巻き込まれていくことになるのだけれども、内容としては新しいことをしてるわけではなくて。遊園地の幽霊だったり、秘教を崇拝している島であったり、そこはかとなく既視感を感じてしまう舞台設定。80年代に戻ったかのような直接的なスプラッタ描写や胡散臭いオカルティックな話はちょっと前のB級ホラーや怪奇漫画を想起してしまう。また少女漫画テイストな絵柄やその作風だって、伊藤潤二、高橋葉介、諸星大二郎といった大御所たちが背後に見える気もする。

 ただそれがまた安心するというか。怖いかというとあんまり怖くないのだけれども。こんな血まみれで逃げ回りまくりで無残に殺されるド直球なスプラッタだったり、苦笑すれすれのオカルトだったり、古典的な仕掛けのホラーが面白く読めるという喜び混じりの驚きがあって読んでいる時は本当に楽しかった。
 ひよどり祥子の面白さというのは、そういう古典的なホラー漫画だったり映画だったりのエッセンスを取り込んで、現代風にうまくリファインできる所にあると思う。とかいうのは簡単だけれど、めちゃくちゃセンスが良いよなあ。またとにかく女の子が可愛いもの。何しろ古来より美少女に適度な臓物成分さえあればそれだけで読めるというのは証明されているのだ。

 この作品集ではむしろ異色なのかもしれないけれど、随一で面白かったのは「いるのにいない同級生」。すっと同級生が薄くなるビジュアルは衝撃的。何より唯一といっていいほど怖い。奇想の意味でも実に好みだった。
 ひよどり祥子らしさは物語よりもむしろキャラクターの可笑しみにあるのかもしれない。やっぱり委員長のキャラは強烈だよなあ。この先どんなひどい目にあってもタフに生き延びていく強さは憧れざるをえない笑。そして当然のように全女子生徒の写真を持ってる友人。一見普通のようで、ちょっと頭のネジが外れちゃってるような主人公。怖いのか可笑しいのか分からない事件の数々。寝る前に読めちゃうくらいのぞくぞく感と楽しさは他ではなかなか得難いよなあ。

 大作家たちのホラー漫画の系譜ってこのまま途絶えていくんじゃないかとなんとなくにでも残念に思っていた人は多いと思うのだ。ホラーMだって休刊してしまってなおさら怪奇ものには世知辛さを感じてしまうわけで。応援コメントの豪華さにもある意味そんな危機感が現れているのかもしれない。そんな中でひよどり祥子はさっそうと現れた救世主ですよ。
 しかしまだ1巻とは書かれてないんだよなあ。連載は続いているみたいだけれど2巻の刊行はまだ決定してない模様。ということで皆さんぜひ応援しましょう! ホラー漫画好きなら後悔しないから。おすすめ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-12-20 00:25:31] [修正:2012-12-20 00:25:31] [このレビューのURL]

10点 寄生獣

皆さん、漫画について評価をするとき、何を基準に評価しますか。
絵でしょうか、ストーリーでしょうか、心理描写?もしくは作者の主張でしょうか。
いずれにせよ、何かに焦点を合わせて、解説するものじゃないでしょうか。

実は、作品「寄生獣」を解説するときには、それら漫画を形作る様々なパーツはさして意味をなしません。これは全巻読み終わった人にしかわかりませんが、この作品の優れているところは、一言で言うと「バランス感覚」。要素の一つ一つは決して意味をなさないパズルのピースも(本当はそんなことありませんが)それが全て合わさったときに、初めて全体像が見えるものです。具体的に述べると、割と絵やアクションシーン、ストーリーなどが地味に見えがちですが、終わってみるとなんら飾り気のない、正直な作品でありますから、”きれいな”モノにまみれた現代の私たちには普段味わうことのできない充実感と感動を味わわせてくれます。そのパワーの大きさたるや、「漫画というメディアを超え魂を揺るがし、人生に影響する」ほど。10点にふさわしい作品です。


<私感>
※多少ネタバレ含みます。
物語の終盤で「人間は心が暇な生物。それが人間の素晴らしいところ」というような表現が出てきます。この作品こそがまさに「心の暇」の産物なのでしょう。
ところで、この作品が書かれたのは1990‐1995年。バブルが崩壊し、日本人が”内”に閉じこもっていく時代です。そういう意味では、一番日本人が「心の暇」を持て余してきた時代ともいえます。
この「暇」が生み出したものは数知れません。ネガティブな意味を持った作品もかなり多いです・・・(エヴァンゲリオンとかね)
逆説的ですが、この作品はネガティブな意味での「心の暇」を超越しています。
あの時代のものは、今となっては、忘れ去られているもの”ばかり”ですが、この作品はあと10年たっても、20年たっても、輝き続けるでしょう。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-12-19 01:55:50] [修正:2012-12-19 02:57:32] [このレビューのURL]

 モーニングツーに掲載された9篇を集めた宮崎夏次系の作品集。デビュー作ということで、西村ツチカ、九井諒子、市川春子なんて最近のニューウェーブ系の流れに位置づけられるのかもしれない。そう言う意味では、もはやこの手の絵柄だけでは新鮮なんて感じることはできないのだけれども。

 でもこの作品はそういう新鮮とか新鮮じゃないとかいう次元の話では全くないよなあ。久々に漫画を読む楽しさを存分に感じさせてもらった。
 というのもこの作品、ストーリーだけ説明しても全く面白さが伝わらないと思うのよ。とにかくシュールで、荒々しくて、理不尽で、荒唐無稽で、とことん馬鹿話。あらすじを伝えても困惑させるかもしくは失笑させる自信しかないもの。作品集の最後を飾る「紙村のさわやかな変体」なんてクライマックスでオムツが空に飛んでいってしまう。他の短編も概ねそんなテイスト。

 ただこの漫画が凄みはそんなストーリーがやはりシュールで、荒々しくて、理不尽で、荒唐無稽な絵柄や語り口と合わさった時に、オムツが空に飛んでいく場面で泣けてしまうってことで。漫画において、これだけ絵と物語が不可分な作品を作れる人がどれだけいるんだろう。デビュー作でこれだけのものを作り上げてしまえるんだから、本当にとんでもないよなあ。
 いやあ、でも本当に理不尽だぜこれ。だって自分でも何でこんなに感情を揺さぶられているのか分からないのだ。宮崎夏次系は心底理不尽に、突然に、鮮烈に、登場人物の激情を切り取ってしまう。そして訳も分からないうちに震えてしまう。泣かされてしまう。そんなに本当にわくわくする漫画体験。

 特に個人的なお気に入りは「水平線JPG」「娘の計画」「成人ボム 夏の日」「飛んだ車」。「飛んだ車」のまさに車が飛んだシーンなんて脳裏に焼きついて離れないもの。他にも「娘の計画」の“なんで”だったり、「成人ボム 夏の日」の凝縮された3分だったり…宮崎夏次系は一瞬の感情を鮮烈に切り取って、私たちの脳裏に焼き付けてしまう。

 この人がストーリーだけ提供しても絶対にこれほどまでに感情を揺さぶられることはないってことは確信できるもんなあ。漫画であることにひしひしと意味を感じさせてくれる人は松本大洋を始め、ひと握りしかいないと思うのだ。ということで間違いなく天才の類だと思うので、一読をおすすめ。特に短編好きはマスト!

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-12-13 00:13:27] [修正:2012-12-13 23:50:43] [このレビューのURL]

内容の多くは他の方も語っていますが、
子どもの時にテレビをみてから漫画をよんでみました。
そのあまりにリアリティのある恐ろしい内容に
恐怖するとともに なにか自分のまわりにも起こりうるような
人間の弱さ、社会のもろさを感じてました。

今のまんがは売れていればいつまでも引き延ばしてしまいますが
この漫画は作者の思った通りの長さでおわっています。
それがすばらしい。ぜひ一度フラットな気持ちでよんでみてください。
レビュー内容を忘れて。。(笑)


5巻という短さを感じない叙情詩。
作者自身この作品を超えられず 連載終了後に
デビルマンネタで何度も作品を書いています。
おそらく当時の永井さんに何者かが描かせたんじゃないだろうかと思うくらい
別格で本人も超えられない壁なんじゃないかなとおもっています。


ところで他の方もレビューに書いている
後半の偉人編は不要では?とありますが
あれこそが「新・デビルマン」と称して連載終了後に描かれた作品の1つです。
正直本編に組み込ませて読ませる今の文庫版のやりかたは
納得いかないですね。

勢いがそこで損なわれてるのがわかります。
新・デビルマンは今沢山量産されているデビルマンオマージュの単行本と並列にあつかってほしいとおもっています。

みなさん、あの部分は絵柄も違う事からわかるように
別作品です。

できれば飛ばしてよんでください(笑)

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-12-07 15:24:03] [修正:2012-12-11 19:51:22] [このレビューのURL]

繰り返し読めば読むほど、話が分かり、面白さも分かる。
だが、1周目の時点で
・長い(全22巻+上下)
・長い(1997年?ともだち歴3年)
・話があっちこっちにいく
ということで、挫折しそうになる。

だから、連載時に雑誌を追って読む根性はなかったと思う。

家に全巻あって、スペースをとるので何度も「売りに行こう」と思うのだが、「売りに行く前にもう1回読んでおこう」と読み直すたびに「やっぱり置いておこう」ということにいなってしまう不思議な魅力のあるマンガ(笑)

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-12-11 00:37:57] [修正:2012-12-11 00:37:57] [このレビューのURL]

面白い、というよりも感動・感銘を受ける漫画。そこらへんの小説読むよりもこちらのほうがはるかに感じることが多いです。
人にはそれぞれドラマがあって、人・人生って素晴らしい、人生捨てたものじゃないと思える作品。精神的にささくれ立った時に読むと良いかも。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-11-25 20:38:14] [修正:2012-11-25 20:38:14] [このレビューのURL]

技術的な話が多いけど、コミカルな内容と独特な絵と雰囲気で読みやすい漫画だと思います。
同じ職人系の自分としては北さんの思考に共感するものがあり、自分にとってはあるある系の漫画でもある。

作風が独特でパッと見で敬遠されそうな気がしますが、読んでみると違和感無く普通に読めると思います。意外と女性キャラがかわいいので地味に萌えます。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-11-25 04:25:13] [修正:2012-11-25 04:25:13] [このレビューのURL]

7点 南Q阿伝

怪物王女の南久阿が主人公の漫画で、内容も怪物王女に近いですが、原作を読んでいないと分からないような設定も特に無い為、この漫画だけでも楽しめるようになっています。
絵柄はやや癖がありますが、見づらい事は無いです。
妖怪退治ものの話ですが、能力バトル系のそれではない、変わった戦い方をするので面白いです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-11-20 19:29:15] [修正:2012-11-20 19:29:15] [このレビューのURL]

7点 惡の華

大なり小なり思春期の内に鬱屈としたものを抱える少年というのは多いと思う。自分の心の中だけに存在する、誰にも知られたくない中二病、あるいは変態性。誰に打ち明けるでもなく自分の中だけで育んでいくからこそ、その妄想は自身の精神バランスを保つ鎮静剤となりうる。
しかし主人公の隠し通さねばならないそれは、ドS女にばれてしまうのだ。
そうして主人公は仲村さんの操り人形となる。仲村さんもまた、自身の中に底なしの鬱屈さを抱えていた。一見、彼女はそれを大々的にぶちまけているように見えるが、二人だけが見ることのできる本当の心の闇━━悪の華は、大きく、気高く、成長していくのであった……

漂流ネットカフェは合わなかったけど、これは面白いです。

(追記 第2部 1点UP)
文学(?)少女との交流、そして彼女の抱えていた孤独感に共感できて、最近の展開が面白いです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-08-24 12:34:56] [修正:2012-11-18 22:46:21] [このレビューのURL]

農業に従事する大変さや、あるあるネタ
そして作者自身の体験談を、ギャグを織り交ぜながら描いており
とても読み易く、エッセイ漫画としては充分優れた作品だと思う。

ただ、テンション高めのギャグ要素が自分にはいまいちヒットせず
何度も読み返す漫画には、ならなそう。

欲を言えば、一つの漫画としてではなく
「銀の匙」のおまけの巻末漫画として、これを描いてほしかった。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-05-10 17:56:17] [修正:2012-11-17 20:02:21] [このレビューのURL]

点数別のレビュー表示

月別のレビュー表示