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5点 聲の形

[ネタバレあり]

登場人物にロクな奴がいなかったり喋り方が中二病臭いところが鼻に付きましたが、面白かったです。
特に、主人公が周りを拒絶し?マークを付けてしまうところは共感しましたし、今風だと感じました。

しかし、気になる点がいくつか・・・。

硝子ちゃんがあれだけ自分を虐めていた主人公をあっさり許したり、佐原さんが自分の悪口を言っていた植野を嫌っていなかったり、友達がいなくて冴えない永束くんがすごく良い奴だったりと、どうもこの作者は「弱者=優しい」という考えの持ち主という印象を受けました。


もう少し、硝子ちゃんが主人公を許すのに時間がかかったり、葛藤する場面があったら良かったかな・・・。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2017-01-14 20:45:54] [修正:2017-01-14 20:45:54] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

 英国人日本研究家として知られるバジル・ホール・チェンバレンは1905年(明治38年)の著書「日本事物誌」の序論にこのように記した。

「古い日本は死んで去ってしまった。そしてその代わりに若い日本の世の中になった。」

 本作「ふしぎの国のバード」の主人公イザベラ・バードが日本最果ての地を目指し旅立ったのが1878年(明治11年)であり、作中にも描かれる様々な今や失われた江戸期の幻影が当時はまだ息づいていたことを考えると、わずか20年足らずで一つの文明が死に絶えたということになる。その間に帝国憲法が発布され、治外法権も撤廃となり、そして多くの人々が血を流した日清日露の大戦争があった。

 主人公の英国人女性紀行作家イザベラ・バードは実在の人物で、本作も彼女の著書「日本奥地紀行」(1880年刊行)が原作となっている。明治期には多くの外国人が鎖国を解いたばかりの「神秘の国ニッポン」を訪れ、風景の美しさや伝統工芸の巧みさ、独特な風俗などを讃える文章を多く残し、それらは近年テレビ番組の一ジャンルと化した感もある日本スゴイ系コンテンツに引用されることも多い。

 英国人女性が日本の文化風俗に多大な関心を寄せる様を描く本作及びその原典も、見方によってはそれら日本スゴイ系コンテンツの一部と読めなくもない。実際に主人公バードは人力車夫や馬子など人々の素朴な親切さを讃え、日光東照宮の絢爛さに驚き、会津道の景色の美しさに魅せられる。
 一方で本作の大きなポイントは、それら賞賛だけでなく文明人が非文明化された地を旅する際につきものの「戸惑い」の部分も余さず描かれている点だ。しかもそれは「英国人から見た日本」という視点からだけでなく、「現代日本人から見た当時の日本」、滅び去ってしまった古い日本への我々現代人からの戸惑いとも重なるのである。

 今や姿を消した街中の様々な行商人、お歯黒を塗った女性、背中に立派な彫り物をし、寿命を削りながら奔り続ける人力車夫(江戸期は飛脚だった)、プライバシー概念のない野次馬趣味、低俗な酒宴の余興、老若男女混浴の露天風呂、不快害虫の巣と化した宿の一室、男根をかたどった村の守り神、庶民の貧困、貧困、貧困……

 日本は貧しかった。そして関所で区切られ他藩は他国であった時代の名残から、バードと同行の通訳・伊藤鶴吉も地方の珍奇な文化習俗に驚愕と嫌悪を示す。
 彼は同じ日本人の文化を「あのような恥知らずな風習」と蔑んだ。当時の日本人の志ある若者の多くは、日本を欧米諸国のような立派な文明国にしなければならないと考えていたため、母国の伝統に対して概して否定的だったという。

 そしてそれらのバード(そして読者)の戸惑いが頂点に達するのは、現時点では二巻終盤で描かれた会津の寒村の夜の一幕だろう。不潔な村で病に苦しむ子供に薬を与えたバードを頼り、彼女の宿に押し寄せる、皮膚も爛れたまるでゾンビのような村人の群れ。
(当時の日本人庶民の“皮膚病”事情については、バードに限らず多くの外国人旅行者も記録しているという)

 日本は、貧しかった。ちょっと我々の想像を超えるくらい貧しかった。そして頑張ってそれなりに豊かになった。その過程で一方、多くのものも捨てた。
 それら捨てさられた文明の記録として、「日本奥地紀行」はまことに価値の高い書物で、それを皮相的な日本スゴイ系コンテンツが溢れる現代にこうして漫画というメディアの力を通じて視覚的に楽しめるというのは大いに意義のあることである。
 バードは一旅行者にすぎないので、どうしても彼女の視線は他人事の旅行者目線にならざるを得ず、そこには無自覚な差別意識も免れない。それでもそういう視点からしか描かれ得ないものは確実にあり、現代の我々が死に去った時代を覗き見る上で最適の視点でもある。そして、彼女の視点は、あくまで優しい。

 作者の丁寧な描写力に支えられた意義ある良作といえる。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-12-26 16:28:24] [修正:2016-12-27 04:35:16] [このレビューのURL]

6点 キヌ六

前作「ベントラー・ベントラー」作者による「BLAM」という感じの作品。やや見にくいですが豊富なアクションと安定した絵、サイボーグなどほとんど生身の人間がいないサイバーパンク的SF感も良く出せています。主人公の女の子コンビの外見と絡みも良かったです。話も続きが気になり、割りと纏まったとは思いますが、地球に何度も訪れる氷河期や宇宙を安定させないと滅びるなど背景に独特かつ理解が難しい箇所があり、すっきりしないのが残念。ラストシーンの内容把握に困りますし。総じて前作好きな人にはセットで読むのを薦められる佳作というところです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-12-25 10:54:58] [修正:2016-12-25 10:54:58] [このレビューのURL]

本格的なSF要素を交えながら、ゆるりとした世界観で地球を訪ねる
宇宙人のトラブルを解決する一話完結話。絵の感じといいアフターヌーン連載らしさ
があり、安心して読めます。マイナーですが藤子SF辺りが好きなら相性がかなり
良さそうな隠れた良作だと思います。相棒の宇宙人クタムがエグい外見ながら
主人公(こっちはもっと美人で良かったかも)との掛け合いが楽しく
話に比例して親しみが持てて来るのが面白いです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-12-19 18:26:44] [修正:2016-12-19 18:26:44] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

凡才奏者主人公と天才指揮者ヒロインを据えた音楽漫画。音大青春要素と業界知識の塩梅が良いです。主人公をあえて凡才にしてヒロインの天才ぶり(変人だが)について行くのが独自スパイスとして効いています。変人なヒロインでさえ(最後の行動はともかく)可愛げがあって、主人公を想う二人のサブヒロインもいて、地味目な絵柄以上に女性キャラの描写が上手いです。画も時々荒かったり、描き分けが似た人が居ますが、丁寧かつ好きな画風です。演奏の迫力はイマイチですが。

毎話ごとの作曲家コラムも深さと分かりやすさがあって良かったかと。ただ最大の欠点として最後の締め方が…。変人とはいえあんまりだろってほどヒロインの突飛な行動で幕を閉じてしまう嫌な感じでどんでん返し。エピローグも登場人物が僅かしか出ないで、主人公がサブヒロインのどっちを選んだか曖昧な描写でモヤモヤ(まあ幼馴染かな)。全体としては良作なのは揺るがないとは思いますが、世に音楽漫画が多い中でも光るものがあると思えるほどの出来だったので残念さも大きいです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-12-13 17:46:30] [修正:2016-12-13 17:46:30] [このレビューのURL]

宇宙を舞台にした未来の青春サバイバル漫画。
惑星キャンプに来た高校生の一団が、事故で宇宙船に取り残されてしまう。
彼らが力をあわせて生き抜く様を描く。
星々で水や食料を補給しながらの旅。次から次に起こるトラブル。
高校生は一人も欠ける事なく帰れるか?
そして彼らはなぜこのような状況に追い込まれたのだろうか?

非常に上手な少年漫画。
シリアスとギャグのバランスがよくテンポよく話が進む。
宇宙空間に放り出されて船に戻れない、多数が毒で瀕死になるといった
絶望的な状況をどうにかこうにか切り抜けつつギャグを織り交ぜてくる。
しょうもない漫才が緊張をうまく緩和しているし、
トラブルの解決も、正攻法、奇策、ラッキーをうまく使い分けているし、
各キャラクターの立て方もいい。
彼らの冒険を見ていると自然に彼らが好きになる。
宇宙船をホームにしながら星をめぐる設定も旅の面白さがある。
アニメ向きの作品だと思う。

順調に話が進んでいるが、この類の作品は冒険が軌道に乗ると難しくなる。
水、食料、墜落などの物理トラブルを使いつくすと敵との勝負になって、
大抵はそこから詰まらなくなる。
予想を超えるアイディアを期待している。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-12-11 11:02:27] [修正:2016-12-11 11:02:39] [このレビューのURL]

4点 CLAYMORE

最初の10巻くらいは良作だったのですが、強さのインフレやキャラの増加等、個人的にはどんどん尻すぼみしていった作品です。
世間的な評価もそれに近くなっていたのか、色んな本屋を巡っても、後半巻の入手難易度はそこそこ高かったです。
忍空やマキバオーの後半巻クラスでしたね。笑

10巻までで一通りのパターンをやってしまったので、
その後はどんでん返しの展開も予定調和感があり、キャラクターもステレオタイプに感じられました。

後半は私も読む集中力が完全に切れ、敵も味方も展開もよく分からないまま読んでました。


そもそも一部グロで戦闘シーンの多い西洋ファンタジーを描くには、この作者の絵は儚げで美し過ぎるんですよね。

個人的にですが、次回作は再びエンジェル伝説の様な学園ものか、「みなみけ」的な姉妹の日常漫画を期待します。笑

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-12-05 21:41:19] [修正:2016-12-05 21:41:19] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

絵も丁寧で、コマ割りや、特に構図がいいなっていうシーンは多くあります。
一枚絵にセンスを感じます。

試合シーンも、目まぐるしく変わる展開や魅せる演出も多く、最近のジャンプの中では良作だと思います。


ただ、おっさんの私からすると、以下の2点にそこそこ強い違和感を覚えます。
・キャラクターに個性がありすぎる。髪型ややけに高いテンション等。
・ポエトリー表現が多く、魅せ場の演出力と反比例して冷めてしまう。

「あひるの空」も、その寒さで途中放棄してしまったのですが、ポエトリーなJ-POPの歌詞みたいなのがきついです。
まぁこれは、私がアラサーというのが大きな理由でしょうが。。。笑


アイシールド21と同様、絶対王者的なチームを物語の中盤で倒してしまった事で、再び後半にピークを持って来れるのか心配な部分はありますが、男子バレー漫画では一番面白いと思います。

これは減点対象にはしてないのですが、
スポーツもの少年漫画で多い、後から後から謹慎を食らっていた部員や、一時ドロップアウトしていた部員が加わってくる既視感バリバリパターンはどうにかならないでしょうか。。。笑

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-12-05 21:30:09] [修正:2016-12-05 21:30:09] [このレビューのURL]

NHKでアニメ化もされたファンタジー小説をコミカライズした作品。骨太な世界観があり、良い意味で原作者、主人公エリンはじめ物語の軸にいる重要人物に女性が多い珍しさ、それを活かした掘り下げや心理描写。ちゃんと表現出来ているんだなと感じるだけの画力(原作挿絵担当者が本作作画も担当。男性読者でも馴染み易い画風。アニメもチラ見したことがあるが、漫画版の方が原作雰囲気はしっかり出せているのではと思う)。タイトルにピッタリで本来終わらせる予定だったらしいところまではしっかり漫画化されており(アニメもこの辺まで)、そのラストシーンは強い感動があります(特にエリンの独白にはグッと来るものが。痛いシーン含め過程があったからこそ)。ただ原作もそうらしいですが(続編が作られた一因)、ここで終わるとキャラと世界のその後などエピローグがどうしても欠けている印象が否めません。惜しく感じるし、結局その先も調べてしまうほど。漫画として考えると欠点なのは否めなかったですね。もう少し漫画では原作の先があるだけに、それに沿うエピローグ的なのを付けて一区切りとした方が良かったと思います。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-12-02 20:08:11] [修正:2016-12-02 20:08:11] [このレビューのURL]

7点 BUTTER!!!

高校ダンス部での青春群像のお話です。
今風のセリフ回しが多いのも特徴です。

元気印の夏、ネクラで目標のない端場の男女二人を
中心に展開されるお話かと思いきや、周囲を固める
脇役に焦点が移っていき、むしろ味を出しているのは
たった4名のサブキャラ達でした。

コンプレックスで自縛状態の柘、他人とぶつかり合え
ない掛井がお気に入りです。
柘は単なる数合わせ的なメンバーと思っていたら、
突如前髪を上げたりしてサナギが蝶に変身してしまい
ました。それでも根本的なコンプレックスから抜け
きれておらす、むしろ愛おしくなるくらいの魅力ある
キャラになります。

創部者でありながら副部長と影の実力者を装う和美は、
熱情を隠しつつ笑顔を出しません。
部長の高岡は、そんな和美の孤独さに魅かれて
ダンス部を手伝います。

青春には淡い恋心がつきものですが、できるだけ
これを排除して、熱中したり打ち込めること、
楽しめる自分探し、仲間探し、といった女性作家
ならではの視点で物語を進めていきます。
これは男性作家では絶対描けない世界だなあと
思いつつ、一方で自分の青春と重ね合わせて
共感できました。

胸の奥のチリチリした青春への憧憬に火をつけて
くれる作品です。私は結構気に入りました。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-10-30 09:05:45] [修正:2016-10-30 09:05:45] [このレビューのURL]

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