「朔太」さんのページ

総レビュー数: 821レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月09日

7点 A-BOUT!

道でガンたれれば、喧嘩が始まるような典型的なヤンキー
漫画といえばそれまでですが、青年誌でも堪えるような
テイストがあって、この分野では出色かもしれません。

以下にお気に入りの点を列挙しましょう。
・主人公の朝桐は、全くのバカ。
 計算、打算が全くできない点、動物的なその場限りの
 感情で行動する馬鹿ですが、案外人間味を感じます。
・ヒリヒリする展開が連続する中で、ギャグが適度に
 混ざっており、程良い加減です。
・普通、ヒロインが登場するものですが、全くの女っ気なし。
 この点は異色ですね。全編にわたって女性は登場して
 ない気がします。
 あの名作「男組」ですらヒロインはいましたからね。
 著者は女性を描くのが苦手なのかと勘ぐってしまう
 ぐらい徹底しているのが、かえって硬派ぽくって
 宜しいかと。
・一方で、暴力の連続なのに、人間離れした体力、根性、
 生命力が際限なく継続します。
 こんな人間おらんでしょう、というレベルの化け物が
 どんどん登場しますので、この辺りはどこかで既に
 読まされてきたパターンですね。
 また、ヤンキー漫画では宿命ともいえるのですが、
 どんどん強いキャラが登場させないと話が持たず、
 展開が進むと誰が誰だが分からなくなります。

総じてどの展開も気持ち良く終結していて、面白く読めました。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-04-10 20:05:25] [修正:2017-04-10 20:05:25] [このレビューのURL]

ヘタレとヤンキー娘の普通考えにくい組合せの同棲話。
ヘタレのサトシには、ついつい顔を覆いたくなるようなエピソードが満載です。
わが身に置き換えると赤面してしまいます。
一方、チーコは典型的なヤンキー娘でして、女子の特有の可愛さではないんですね。
この可愛さを表現できる作者の腕前は大したものと感心します。
結婚したいサトシと結婚を恐れと考えるチーコの葛藤は、最終的に
見せ場になりますが、大きな展開はないお話でした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-03-25 07:00:10] [修正:2017-03-25 07:00:10] [このレビューのURL]

W杯アジア最終予選において残り三試合だけで9巻にまとめられた作品です。

日本は4位であり、残りサウジアラビア、オーストラリア、
イラン戦を前に、外国人監督に全権を委任して交代する
ところから始まります。
問題は、得点力不足でFWの不在です。
これは2006年頃の本当に日本の悩みだったわけで、とても
リアルな背景になっています。

日本代表チームの和は、エゴイストである主人公FW戌井に
よって乱され、様々な不協和音を生みます。
一方、作者の考えが反映された外国人監督はFWをひたすら支持します。
これに反発しつつ、次第に理解し成長していくチームの過程が見どころですね。

実際のところ、こんなFWが日本に欲しいという熱烈な
サッカーファンである作者の願いが表現されている気がします。
チームプレーもいらない、パス回しも不要、仲良しチームである
必要もない、ただ得点をゲットする結果だけを求めるFWを
あるべき姿として描いています。

ある意味では、長編でありながらたった半年の過程であった
名作「スラムダンク」のサッカー版とも言え、9巻を一気に
読みたい作品です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2017-02-28 02:32:26] [修正:2017-02-28 02:32:26] [このレビューのURL]

相当フェティッシュな要素が組み込まれたラブコメです。

それでも10年近い連載ですが、相当の支持があったのは意外です。
というのも、ヒロインの卜部さんが従来のラブコメの主人公
とは相当違ったタイプなんですね。
思春期に出会う男女が互いにミステリアスな存在である
ことは分かるのですが、思春期で感じる可愛らしさは、
むしろ友人の丘や諏訪野にたっぷりとあるのです。
こちらに焦点を合わせた可愛らしさ、恋愛の危うさを時折、
挟んでくれるあたりはノーマルな恋愛を踏まえており、
安心させてくれています。

私にとって終始一貫して、この漫画が特別なのは、
卜部さんが飾らない、背伸びをしない、格好をつけない、
見栄を張らない性格の女の子であり、とても従来のヒロイン
像とはかけ離れていますね。
前髪で顔全体が見えないヒロインって、それもラブコメの
主人公って、それでも可愛らしさが表現できるなんて、
すごくないですか?

肝心の椿と卜部に戻すと、彼らは世にいう思春期の
プラトニックな恋愛中の普通のカップルですが、
ちょっとアブノーマルな独自の特別な絆で、存在を
確かめあっています。
キスもしない二人にとって極端な絆ですが、その延長
線上に大人につながるエロを感じさせます。
そのような意味では、普通の恋愛模様かもしれません。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-02-12 17:46:38] [修正:2017-02-12 17:46:38] [このレビューのURL]

怪物くんを連想させる表題から、怪物世界の怪物たちと
それを統べる王女の物語をイメージしてしまいました。
しかし、いやいやなかなかどうーして、ペーソスな背景が
あって大人バージョンの怪物くんでしたね。

王族の後継者になるためには、王族兄弟同士で生き残りを
かけた戦いが必要だということ、勝ち残った王族は不死鳥
になるなど、孤独の王女の哀しみが上手く織り込まれて
います。
当事者の王女は、その悲しい運命には一言も触れないの
ですが、それをほのかに感じ取りながら寄り添う部下や
仲間?の同居人がまたうれしい。
本来、人狼と吸血族は敵同士ですが、王女の下でゆるい
関係性で力を合わせる。
血の戦士という弱々しい高校生男子以外は、仲間として
女子しか出てこないのも、女子の友情がベースにある
感じがします。

肝心のシナリオですが、独特の世界感で不思議体験と
冒険が毎号読み切りの基本形でした。
SFとして理解が困難なケースも多かったですが、
私には前述の王女の(姿は勿論のこと)心情の
可愛らしさで毎号納得できました。

良い作品と思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-02-06 20:31:05] [修正:2017-02-06 20:31:05] [このレビューのURL]

スポーツ漫画と呼んではいけないと思う不思議な漫画です。

というのも、主人公は恩ある義父のためにビジネスの世界
でも成功者になったり、愛憎を絡めた展開だからです。
これも9秒台で走れば感じる「光の世界」の魅力は
ビジネスの成功以上だと説明するための伏線だった
とも思えます。

スポーツを主題にした少年漫画は、一定の定型があって、
努力しバトルに勝つプロセスをハラハラドキドキで楽しむ
ものですが、この作品ではバトルはありません。
戦う自分もおらず、「光の世界」に取り憑かれた者たちが
描かれているだけです。

「100mを9秒台で走ることのできた人間は、宇宙を
翔べた人間の数よりはるかに少ない。10秒の壁をうち
破ればそれを成し得た人間にしか体験できない、
9秒台の宇宙というものがきっと存在するんだ。」

そして迎える最終話では、一握りの天才たちだけが
感じる世界が表現されます。バトルのないスポーツ
漫画という分野では先駆的作品ですね。
その後の曽田正人の作品にも同じモチーフを感じて
いますので、想像でしかありませんが、少なからず
影響を与えたのかもしれません。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-01-30 20:37:53] [修正:2017-01-30 20:37:53] [このレビューのURL]

7点 結界師

正義感にあふれる猪突猛進型主人公が、宿命に抗うことなく、家族を含めた周囲の人たちとともに森を守るという少年誌らしい展開です。

森の謎からさらに世界感を拡大できる可能性もあったはずですが、そこは最初に設定した結界師の使命から逸脱してしまうせいか、こじんまりとした世界感、すなわち主人公の生まれ育った町と関わり合いのある人を守るという、まあどう転んでも大差がない感じの緊張感のない背景が生まれてしまいました。
これが結局、最後までたたってしまい、本作品の魅力を半減させた理由でしょう。

兄との確執も前半から絡めたはずですが、途中から後回しになってきました。主人公より兄の方が能力も人間的魅力もずっと上回っているのも困りものでしたね。猪突猛進感情支配型の主人公は無骨で戦略の才に欠け、主人公としての魅力に乏しいものでした。これも本作品の致命傷だったかもしれません。

結界師の異能ぶりも単純で、世界感も分かりやすく設定されている割には、その世界の裏側で様々な権力闘争と森に対する謎が最後まで温存されているため、先の展開が楽しみになり、どんどん読めました。
ヒーローやヒロインには、特別強力な武器があるわけではないのですが、その武器の使い方と組み合わせ方で様々なバリエーションを見せた攻撃には感心しました。

以上は、30巻あたりまでの感想でしたが、最終巻までの大団円までは魅せてくれました。女性作家らしく、テーマは家族愛として、うまくまとめてくれました。
長短いろいろ申しましたが、総じて満足ができる作品かと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-11-27 17:12:20] [修正:2016-11-27 17:15:50] [このレビューのURL]

下町人情噺がベースにあって、「人間、生きる限りはこうでなくっちゃ。」
って感じになります。
主人公なつの全てにおいて前向きで、明るい単純明快な生き方は、生き方の
下手な今風の若者の大いに参考になるように思います。難しく考えない、
妬まない、周囲との関係性の中で生きる自分を見失わない、というような
シンプルな原則で生き方が貫かれています。

一方で、両親も義祖父母も他界し、今は天涯孤独のなつを正体は明かせない
まま見守る祖父母の気持ちもやるせなく、相当のウェイトで展開を盛り上げ
ています。

和菓子職人という伝統芸のような世界にあって、日本的で昭和的な人情噺は、
我々にとって今や時折必要なサプリメントかもしれません。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-11-12 05:03:40] [修正:2016-11-12 05:03:40] [このレビューのURL]

7点 BUTTER!!!

高校ダンス部での青春群像のお話です。
今風のセリフ回しが多いのも特徴です。

元気印の夏、ネクラで目標のない端場の男女二人を
中心に展開されるお話かと思いきや、周囲を固める
脇役に焦点が移っていき、むしろ味を出しているのは
たった4名のサブキャラ達でした。

コンプレックスで自縛状態の柘、他人とぶつかり合え
ない掛井がお気に入りです。
柘は単なる数合わせ的なメンバーと思っていたら、
突如前髪を上げたりしてサナギが蝶に変身してしまい
ました。それでも根本的なコンプレックスから抜け
きれておらす、むしろ愛おしくなるくらいの魅力ある
キャラになります。

創部者でありながら副部長と影の実力者を装う和美は、
熱情を隠しつつ笑顔を出しません。
部長の高岡は、そんな和美の孤独さに魅かれて
ダンス部を手伝います。

青春には淡い恋心がつきものですが、できるだけ
これを排除して、熱中したり打ち込めること、
楽しめる自分探し、仲間探し、といった女性作家
ならではの視点で物語を進めていきます。
これは男性作家では絶対描けない世界だなあと
思いつつ、一方で自分の青春と重ね合わせて
共感できました。

胸の奥のチリチリした青春への憧憬に火をつけて
くれる作品です。私は結構気に入りました。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-10-30 09:05:45] [修正:2016-10-30 09:05:45] [このレビューのURL]

麻雀漫画と分類されているようですが、麻雀の手役の進め方を
説明した場面は一度もありません。麻雀に名を借りた賭博
漫画というか、イカサマ手口で勝負する玄人(バイニン)
商売の世界を紹介しているにすぎません。

戦後の混乱期を背景に、喰うか喰われるか、生き延びるか
落ちるか、の命の賭け方も本人次第であって、誰にとっても
賭博人生だったようです。
様々なイカサマ手口を編み出した玄人が、哲也の前に次々に
現れては敗れていきます。その異様さや特異さは少年誌には
相性が良く、長期連載になった理由の一つでしょう。

警察にとって治外法権である寺の中で、絶対負けない秘策を
持つ僧侶、警察権力を背景に負けを強要する刑事、牌に
気付かない目印を付ける玄人、美人玄人等、個性的な好敵手が
次々に現れて、バトルが繰り返されていくわけです。

青年誌のような大人の臭いをちょっと嗅がせて、
少年誌では見せにくい世界を、程良い異様さで別世界の
ような演出させていることで成功しています。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-10-05 05:18:21] [修正:2016-10-05 05:18:21] [このレビューのURL]

月別のレビュー表示