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6点 王ドロボウJING
まず、この漫画にストーリー性を期待してはいけない。
初期の低年齢を意識したものから中期以降の大人っぽい作風まで、ストーリー自体に面白みを見出すことは一度もなかった。
よく雰囲気重視の作品だという評価が下されるが全くその通りで、先人への尊敬と愛を以て描かれる幻想的な世界観や遊び心に満ちたセリフ回し、独特の画の表現方法は古い叙景映画の手法に近いものがある。
ここに魅力を見出せるかどうかによって見る者の印象はがらりと変わってくる。
かといってオタク的なウケ狙いの要素が無駄に強調されている訳でもなく、あくまで作者の頭の中に存在する奇妙な世界の一片が豊富な知識よって自由に描かれており、大衆的な他の作品とは一線を画するものがある。
かなり低年齢層向けのボンボンという雑誌上でこの不思議な作品が成立していたことは今考えても奇跡としか思えない。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2007-06-21 17:38:16] [修正:2007-06-21 17:38:16] [このレビューのURL]
9点 お〜い!竜馬
史実を大きく外れた漫画的な展開や人物の評価が偏っているところに多少疑問は感じるものの、歴史をベースにした長編作品としては抜群に出来が良い。各人物は旧来のイメージを壊すことなく、かつ新しい人物像で生き生きと描かれており、様々な人物が複雑に絡まりあってできた幕末の潮流を絶妙なバランスで再現している。
特に人斬り以蔵や武市半平太、新撰組や亀山社中の面々には並ではない愛が感じられる。と言っても溺愛ではなく、それぞれの光と闇をしっかり分別して描いているのが評価できる。
序盤に「身分差別への反発」というテーマが強烈なインパクトとともに突き付けられ、この骨格を非常に明確に示していることが作品全体に説得力を与えている。
また要所のやりとりは創作とは思えないほどリアリティーがあり、重要な場面とそうでない場面の描き分けが上手い。
歴史の授業ではある種ミステリアスな印象を与えられる竜馬が、この作品の中では誰よりも人間味に満ちた竜馬なのだ。
最大の見せ場である薩長同盟成立以降の展開が少しだれるが、大河ドラマの必然なので仕方ないところ。
よくここまでやり切った! と素直に賛辞を送りたい。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2007-06-21 15:30:08] [修正:2007-06-21 15:30:08] [このレビューのURL]
このシリーズの魅力は奇妙な世界観であり、独特の絵であり、様々な方面へのオマージュである。この色合いは王ドロボウ時代よりも強くなったと思う。
ストーリーを楽しむ要素はかなり低くアクの強い作風なので、合わない人には何の魅力も感じられないだろう。
画力に関しては超一級品。あらゆる時代の美術や映画の影響を感じさせる繊細な線とトーンは、芸術品と見まがうほどの圧倒的な個性と美を放っており、高い次元で完成されている。
文学作品からの引用や言葉遊びを多様したセリフ回しや世界設定も見もの。オムニバス方式で様々なエピソードがその都度世界・時間軸を変えて語られるため、いろんな隠し要素を見つけることができる。
ただこれも分からない人にはちっとも面白くないかもしれない。
漫画としての評価は低いが、一つの作品として見たときの価値は高いのではないかと思う。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2007-06-21 08:00:37] [修正:2007-06-21 08:00:37] [このレビューのURL]
9点 地雷震
ある重要人物の死を境に前半と後半でかなり話の見せ方が変わっており、それに伴って話の主題も変化している特殊な作品。(ちなみに絵柄も同じ時期を境にかなり変化している)
前半は主人公である飯田が積極的に捜査に関与しているため主観的に話が進んでおり、また扱う事件も犯罪者の異常心理や麻薬、催眠といった「犯罪色」の強いものが多い。
この時期の事件内容自体は比較的ありがちとも言えるが、飯田が犯人を追い詰める過程にハードボイルド小説的な面白さがある。
後半は飯田が捜査そのものに絡むことは少なくなり、犯罪者自身やそれに関わる第三者を中心として、より客観的に事件が展開する。扱うテーマは連載当時の時代背景を反映した「社会問題」が意識的に取り上げられており、作者の関心の高さが伺える。
虐待が虐待を呼ぶ悪循環、いじめ問題、自殺の美徳化、酒鬼薔薇聖斗事件を思わせるような未成年者による惨殺事件、脳死や魂の在り処…といった非常に現実味のある問題が独自の切り口で描かれている。
特にこの後半に多く見られる「セリフ」ではなく「空気」にものを言わせる描写の鋭さは圧巻の一言。
どのエピソードも重い内容ながら、少なからず現代社会に身近に存在する「心の闇」について考えさせられる。一見大人向けの作品だが、ぜひ高校生ぐらいの人に読んでもらいたい。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2007-06-21 06:57:34] [修正:2007-06-21 06:57:34] [このレビューのURL]
7点 よつばと!
オタク向けの作者だという先入観を持っていたが、これを読んで印象が変わった。
毎日の何の変哲もない出来事がつづられているだけなのに、ひとたび主人公よつばの手にかかると全てが発見や冒険の連続になる。幼い子供を中心にした切り口は今までありそうでなかったんじゃないかな。
読んでる側の誰もが常識として知っていることをよつばが覚えていく様子と、彼女を取り巻く友達や大人たちとのコミカルなやりとりがいちいち新鮮に映り、思わず笑みが漏れてしまう。
また、ひとコマひとコマの使い方が上手い。
何気ないコマが実は後のエピソードへの布石になっていたり、話のオチが分かったところでページを戻してみるとちゃんとラストにつながる細かい描写が見つかったり、と至るところに読者を楽しませる工夫が凝らされている。
しばらく忘れてた気がする日常の素晴らしさを思い出させてくれる作品だ。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2007-06-21 06:17:07] [修正:2007-06-21 06:17:07] [このレビューのURL]
8点 賭博黙示録カイジ
「ヘタウマ」とはこの作者の絵のことを言うのだと思う。
一般的に見れば間違いなく下手な部類になるいびつな絵だが、この絵の歪みがあってこそ作中繰り返される過剰とも思える心理描写の複雑さが際立って見える。
追い詰められたときの人間心理、疑心暗鬼の中での極限の駆け引きが非情な現実を伴って描かれていて、常に先が読めない展開にハラハラさせられた。
単純なルールのゲームをここまで奥深い展開に昇華できるのは素直にすごい。心理戦を描かせればこの人の右に出る作者はいないんじゃないかと思う。
ただこれでもかと人間の汚い部分を見せ付けてくれるダークな内容なので、万人にお奨めできる作品ではない。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2007-06-21 05:36:23] [修正:2007-06-21 05:36:23] [このレビューのURL]
10点 SLAM DUNK
初めて読んだとき、これほど「はやく先が知りたい」と思った漫画はない。
展開は終始スリリングで、事前にストーリーを知らなければ最後までどう転ぶか分からない。こと試合の場面はそれまでの漫画になかった圧倒的なリアリティーを以て描かれており、汗のしぶき一つに至るまで会場の熱気が、躍動が肌に触れて伝わってくるよう。
特に綾南戦と山王戦の終盤の展開は圧巻。
登場人物たちの個性はそれぞれ際立っており、作者の関与しないところで勝手に喋ったり行動しているようにも感じられる。
また日常の生活と非日常の世界との描き分けが文句なしに上手く、物語にメリハリとリズムを与えていて読む者を飽きさせない。
結末に関しては賛否両論あるが、個人的には過不足なく最高の形で締めくくれてると思う。
僕の知る中では数少ない「万人に薦められる」素晴らしい作品。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2007-06-21 04:20:31] [修正:2007-06-21 04:20:31] [このレビューのURL]
10点 ジョジョの奇妙な冒険
確かにキャラクターも、ストーリー性も、絵柄や手法も、全てが好みの分かれる作品。読む前に良い先入観を持っている人は少ないと思う。
しかし一度読み始めれば、そんな好みを超えて有無を言わさず強引に先を読ませるような不思議な引力に満ちている。
第一部からスティール・ボール・ラン(実質第七部)に到るまで100巻に届こうかという超長期連載。しかも「こち亀」のようなオムニバス形式ではなくて長編戦闘マンガとしてのスタンスを崩すことなく、且つ中だるみもほとんどなく今なお描き続けられていることに僕は敬意を表するッ!
「人間賛歌」のテーマのもとに繰り出されるストーリーには非常に筋の通ったものがあるし、それが作者の一貫した人間観に基づいていることが感じられる。
独特のセリフ回しや斬新な戦闘描写(特に第三部において)も魅力の一つで、ジョジョにまつわるネタは数知れず。この作品が漫画界に与えた影響は計り知れない。
日本の漫画史上最も偉大な作品の一つだと思う。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2007-06-21 03:53:27] [修正:2007-06-21 03:53:27] [このレビューのURL]
「みんな大好き丸尾末広」って感じで、その筋の人間なら誰もが知ってる基本的な漫画家。
私も高校二年生の時分に初めて「薔薇色の怪物」を読み
歪んだ性、見世物小屋、奇形、暴力、血、焦燥……などの要素が
本来相容れるはずの「情念」を排除した、感情を失ったコマで表されており(よく言われる「一枚絵」)
その映画や文学からのパロディ的な要素も含めての「コラージュ性」に心から酔っていた。
と、これは当時の話で今改めて読んでみると、また違った思いが出てくる。
若い感性では刺激が強かっただろうなあ、と冷静にページをめくる自分がいる。
そしてフト気づいたのは「丸尾末広は本気で描いていないのでは?」。
寺山修司的な要素、澁澤(「血と薔薇」とか)、映画ではカリガリ博士はじめ様々の影響。
そのあまりに露骨な「好きもん」さが、どうも引っかかる。
多分、マンガを描くときにニヤニヤ笑いながら描いているような気がする。
ファンが想像するような、例えば江戸川乱歩なら
「暗い土蔵の中で蝋燭の灯だけで作品を書いている」
という真面目な姿勢とは違うんじゃないか。(乱歩のもファンサービスだけど)。
「お前らが絶対好きそうなやつ描くから、ソラあつまれー!」みたいに思っちゃうんだよなあ。
丸尾本人は、それ系のコレクターらしいので好きなのは間違いないだろうけど。
で、コレに収録されてる「腐れオメコにDDT」を読むと納得できた。
いつもどおりの眼帯つけた学生服の美少年が出てきて
ボットン便所の中に落ちたりするのだが、描かれている内容は
最近休憩時間は女子便所で落書をしている、油性細字が最適。
絵が上手いから(星飛雄馬の模写)わざとヘタクソに描かないとバレる。
結局バレ「出て来い お前はB組の丸尾だろう わかってるんだ」
と教師にドアを叩かれ
逃げ場がないから便器の底へ落ちる。
初めて読んだときは勢いで「う〜んカッコイイ!」なんて思ったが、バカな話である。
他の作品内では自分のイメージを崇高なまでに高めておいて
それを卑下してしまうという、メタなギャグ。
ああ、やっぱりそういう感覚の人なんだなあと分かる。
更に最後のページに「正しいエロ漫画の描き方」というコマまで用意してあり
?,△泙螻┐?うまくない事?▲螢▲襪任△襪海鉢F鐡?であること
?ぅ好函璽蝓爾?なければ納得しないようなアホな読者の為に
取ってつけたようなストーリーでもちゃんとつけておく
ますます自分の描いてることがちゃんと分かってるような様子で面白い。
「良い漫画家例」で福原秀美と書いてて皮肉ってるのも楽しい。
あとまだ言いたいことがある。
よく「高畠華宵まんまの顔」と言われるが
絵の下手さ(この頃は上手いとは思えない)と合わさってか
しっかり「丸尾末広の絵」になっている。
捻くれた感想になったが、昔ほど熱狂して読めなくはなったものの
なんだかんだで、やっぱいいよなあ、とシミジミ読める丸尾マンガ。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2007-06-21 00:07:45] [修正:2007-06-21 00:07:45] [このレビューのURL]
最初と比べるとキャラが増えストーリーも多彩になり迷走がちで天満が烏丸に告白するというのはいつになるんだ?
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2007-06-20 22:10:17] [修正:2007-06-20 22:10:17] [このレビューのURL]