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「家に帰るまでが修学旅行」とはよく言うが、この漫画も家に帰るまでを
追いかけ、修学旅行の本来の趣旨どおり何かを学ぶ、その過程を描いた漫画。
恐怖へと追い込まれる演出もいいし、そこから狂気へと至る性もよく描けており、
同じく恐怖とそれに支配される人間をテーマにした「漂流教室」の正統な
後釜的傑作となるかと思いきや・・・である。
賛否両論というか否定の方が多いであろうラストにやはり問題がある。
「読者に考えさせる」系の締め方に異論はない。問題はその内容である。
終盤での文字の洪水のおかげで、本来読者が自ら考えるべき「恐怖の正体」や
「狂気に侵される人間の脆さ」といった主題がほとんど語られてしまい、
読者が想像する余地すら残らなかった。特に、あるキャラの説明的すぎるセリフの
せいで、ラストで読者が突き放された後に残るものは、本来作者しか知り得ない
「この後は?」とか「富士山噴火?の原因は?」といったストーリーの
末節部分に対する疑問しかなく、単なる破綻したサバイバル漫画に成り果てた。

読者はそこまでバカではない。セリフでクドクドと説明しなくとも、
意識下無意識下のうちにテーマを感じとり気付くのである。
そしてそこから自ら考えたどり着いた結論こそ、自らのものになるのである。

このままではテーマがはっきり伝わらないのではと考えた結果なのだろうか。
名作といわれるものは、得てして多くを語らないものであるにも関らず。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-11-04 21:37:34] [修正:2005-11-04 21:37:34] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

前作「海猿」でも感じたのだが、この人は葛藤を描くのがとても上手い。
無駄を省いたピンポイントのセリフと内面描写が、過剰なまでの強烈な絵と
相まって、もの凄く濃いドラマを形成している。
主人公の苦悩もさることながら、医師対患者や医師対医師との間で
起こる価値観と価値観のぶつかり合いが大きな見所であり、さらにそこから
価値判断の根底となる人間のエゴを暴き出そうとする筆致は、時に見ていて
痛々しい程に内なる激情を揺さぶられる思いがする。

久しぶりに漫画を読んで泣いてしまった。辛い展開山盛りの「がん医療編」で、
最期の彼女なりの「死に様」とその家族なりの受け止め方を見て、「あざとい
演出だなぁ」と思いながらも文字通り涙が流れてしまった。
「BJへの冒涜だ」とか「医療考証がなってない」とか「実際の現場と
かけ離れてる」とか言ってもしかたがない。
セリフに感動しストーリーに泣いたのだからこの点数である。

一部で騒がれたが、個人的にはこのタイトルはアリだと思う。
表現や手法は違うものの、しっかり受け継いでいこうという気概を感じた。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-11-03 19:46:05] [修正:2005-11-03 19:46:05] [このレビューのURL]

6点 骨の音

「ゴミの海」にびっくり。おいおい、デビュー作でこれが書けるのかよ…かなわねーなこりゃ、この人才能あるわ。

俺は漫画とか映画とかを見るときに、割とその話の構成とか、演出とかの技術的な部分を気にしてしまう人なんだけど、岩明均さんはすごいねぇ。家庭内の不和を「パサッ」という新聞を広げる音ひとつで表現するあたり、しかもそれをデビュー間も無い短編でやってしまうとこなんかに本物の才能を感じる。
なんか、地に足がついてるというか。多分この人は揺るがないな、あと何十年かはマイペースに漫画を書いていってくれると思うよ。
いやー、参った参った。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-11-03 12:46:30] [修正:2005-11-03 12:46:30] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

狂える作家が一人の女に導かれ、気違いじみた芸術の深淵に足を踏み入れる物語。

白昼夢に取り憑かれた男を主人公にしたことが設定として上手く活かされていて面白い。
どこからが夢でどこからが現実なのかわからず、ひとつのエピソードが終わるまでそれがどういう話なのか予測しようがないのがいいね。船の話なんかはそれでいて上手くオチがまとまってるし、このへんに手塚治虫のソツのなさを感じる。

ただ、この現実と幻想が入り混じった感覚が最後まで一貫していれば良かったんだが、2巻に入って黒魔術の話がメインになるとそれまで「わけがわからないから良かった部分」に突然説明が入ってしまって、途端に面白味が薄まってしまう。
読者ウケが悪かったからテコ入れしたらしいんだけど、俺は前半部の狂った感じが好きだったのに。最後まで徹底してそれを貫いてほしかったなあと思って少し残念。


この漫画に出てくるバルボラという女、これはまるで芸術そのものを具現化したような女だ。気まぐれで、本当にいるのかどうかわからないってとこなんて特にそう。
そして偏屈で気狂いじみた作家というと、どうしても色々と逸話の多い手塚本人を連想してしまう。
多分この作品は手塚治虫の半自伝みたいなもんじゃないかな。「芸術」という名前の女と付き合った日記のような。
そういった意味でも印象深く、興味深いので、個人的に手塚作品の中でもかなり好きな一作だったりする。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-11-03 12:37:19] [修正:2005-11-03 12:37:19] [このレビューのURL]

10点 シグルイ

「覚悟のススメ」の異能:山口貴由先生が描く残酷無残時代劇。
といいながらも、ただグロテスクなわけではなく、美しい!
見事なまでに綺麗に描かれた肉体と内臓と血液のリアルさには
誰もが驚く。そしてなんといってもそのリアルさを追求した
うえに、冷たくも熱い物語がそこには存在している…。

そのリアルなまでに過激な描写は誰をも惚れさせる威力がある。
肉体の線画もさることながら、影付けや間合いの描写も最高!
点数の参考表にもある通りこの作品への10点の理由といえば
「漫画というメディアを超え魂を揺るがし、人生に影響する」
ほぼ上記内容に当てはまる作品なのだ。読む人を選ぶ作品だとは
思うが、この作品を一度手にして損はない。
山口先生の熱き魂を、そして先生最高傑作を心して読むべし!

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-10-26 19:15:02] [修正:2005-10-26 19:15:02] [このレビューのURL]

2点 涼風

ビックリするほど中身のない漫画。
ものの1分ほどで1話を読めてしまうくらいペラペラ。
陸上?アイドル?銭湯付き女子専用マンション?
ウケそうな要素を言われるままバラ撒いたのに、あろうことか
それを風で吹き飛ばしつつ迷走を続ける、「何がしたいの?」系漫画。

何故、連載が続いてるのかまったく分かりません。
一応読んでるオレが言うのもなんだけど。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-10-26 15:34:29] [修正:2005-10-26 15:34:29] [このレビューのURL]

8点 寄生獣

これぞ名作といった感のある90年代を代表する有名SF漫画。
絵は古臭いと言うか淡白ではあるが、SFとしてのエンターテイメントを
追求した構成・演出とメッセージ性がとてもバランス良く織り交ぜられており、
SF設定やスプラッタ描写の適度さもさることながら、登場人物や
ストーリー展開にまったくもって無駄がなく、とてもスマートに仕上がっている。
やや後付け的に「環境問題に対する姿勢」などのテーマが出てくるものの、
「人とは」「生きるとは」といった主題を掲げ、それを一応の形ではあるが、
エンターテイメントと両立しつつ処理し描ききった事はとても素晴らしい。

ハラハラドキドキとSFを楽しみながらも、読後に考えさせられるタネを
与えてくれる、まるでSF漫画のお手本のような岩明均の大代表作。
(個人的には「七夕の国」の方がオススメですが)

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-10-26 14:53:16] [修正:2005-10-26 14:53:16] [このレビューのURL]

9点 SUGAR

漫画の鬼才がボクシングの天才を描いた漫画。
数あるボクシング漫画の中でも特に異彩を放ち、アクが強く人を選ぶが、
ひとたび新井英樹漫画の「読み方」が身に付けば必ずハマる作品。
それだけでひとつの漫画が作れそうなほどの濃い脇キャラの中にあっても、
まったく埋もれないどころか、より際立っている主人公リンの描き方は
TWIMでも見せたキャラ立ての才能が如何なく発揮されている。
また、セリフでの言葉のチョイスがセンス抜群。
ボクシング描写もスタイリッシュ。

絵柄や独特のキャラ回しに食わず嫌いをせず、
手に取って最後まで読んで欲しい。思わず他人に勧めたくなる傑作漫画。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-10-20 22:04:58] [修正:2005-10-20 22:04:58] [このレビューのURL]

7点 DEATH NOTE

ヘタなサスペンス小説よりは余程面白い。
青年誌であれば哲学的な方向にいったり社会問題に切り込んでみたりする
であろうやや陳腐な設定を、ジャンプお得意の(バカの一つ覚えの)バトルへと
持ち込んだ点が功を奏し、ありそうでなかった異色の作品である。
並みの作家なら「このアイデアは後の為に置いておこう」とか
「このネタで4話くらいはもつな」と考えそうな駆け引きや展開のタネを
これでもかと言うほど詰め込み、出し惜しみなく使っているおかげか
セリフも多く読み応えが十ニ分にあり、お買い得さ満点。
だが、後から後から新ルールが追加されていくのでなんでもありな感じは否めなく、
作者の都合一つで新たなトリックを出されても読者は白けるだろう。
また詰め込みの弊害としてのちの展開がマンネリにならないか心配でもある。

現時点では次編が完結していないので、ライトvsL編でこの点数。
ここで終わっておけば良かったのに・・・とならないように期待したい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-10-20 20:41:42] [修正:2005-10-20 20:41:42] [このレビューのURL]

ハラハラドキドキする展開や突飛な設定、奇抜なアイデアなどが
あるわけではないが、淡々と進むストーリーの中に人物の葛藤が
優しくそして力強く描かれており、上質で温かさ溢れる大人な漫画。
派手さばかりを追い求めずに描ききった姿勢には好感が持てるし、ある意味
ベタで哲学的な展開になるものの、これがデビュー作だというのは
正直言って驚きです。今後にも期待出来そうですし。

団背広さんの言うとおり、おまけの4コマはスベってますが、
少し肌寒くなる秋口にぜひ読んで欲しい作品です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-10-20 20:10:03] [修正:2005-10-20 20:10:03] [このレビューのURL]

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