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日本では馴染みの薄い「フス戦争」を題材にした物語が遂に完結しました。
シャールカたちの戦争継続反対の声も掻き消され、遂に最後の戦いに赴く面々ですが形勢不利は明らか。
事前に降伏を勧められても拒否し、滅亡への道を進み続ける。
シャールカもそんな仲間たちに殉じて共に戦い玉砕しようとしますが・・・・・。
長きに渡ったフス戦争も集結し、新しい流れが起きます。
但し、それは「和平への道」ではなく、新しい勢力による新たな争いの道と言った方が正しいでしょう。
シャールカと共に長きに渡って戦ってきた仲間たちも命を落とし、生存できた人間は片手で数えるほどしかいません。
結局、「ヤン・ジェシカ」が掲げていた大義は実現できなかったのでしょうか?
九死に一生を得て戦場を脱出したシャールカはヨハンの元に残してきた愛娘・クラーラと十数年ぶりに再会を果たし、物語の幕は引かれます。
思えば物語の開始早々に家族を皆殺しにされ、強姦され、悲しみの淵に沈む暇さえなく戦いに身を投じねばならなかった少女・シャールカ。
多くの悲劇を乗り越え経験した果てにようやく離れ離れだった娘と再会できるのはせめてもの慰めでしょう。
そもそも漫画作品で主人公が妊娠・出産を経験する作品は一部のレディース向け作品を除いて「まず有り得ない」ことであり、大河ドラマのラストシーンとしても極めて異色である本作です。
娘・クラーラは少女時代のシャールカによく似た美しい少女に成長しました。
父親のヨハンの伝手でクラーラが貴族と結婚出来れば、シャールカが孫をその手に抱くことも叶いそうです。
最終巻の年齢はシャールカ30歳、ヨハン31歳、クラーラ15歳。
当時は平均寿命が短く、20歳まで生きた人でも45歳くらいが平均寿命になります。
シャールカもこれからは壮年を経て晩年に至るのでしょうが、家族と共にどうか平穏な後半生を送って欲しい、
そんなことを願わずにはいられない物語の帰結でありました。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2019-06-12 17:05:14] [修正:2019-06-12 17:05:14] [このレビューのURL]
6点 外天楼
「外天楼」と呼ばれる建物に住む住人たちの悲喜交々を描いた連作短編集。
最初の話から最後の話まで一貫して大きな一つの流れの中に存在している。
冒頭の中学生的な性欲むき出しの男の子のエロ本獲得話は全体の流れの中では異色の話で、登場人物の顔見世的な印象。
そこから第2話に移り、いきなりロボットが登場するような近未来のSF的な話に移る。
このロボットに代表されるような人工的な生命体の存在がこの作品のひとつのテーマであり、それを生み出すための事件が徐々に明らかになっていくのであった。
第1話の雰囲気からは想像も出来ないような方向に話は進み、殺人事件が発生し犠牲者が多数出た。
ラストシーンはあまりにも悲しく、読後感は決して良くはなかった。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2019-06-12 08:09:09] [修正:2019-06-12 08:09:09] [このレビューのURL]
5点 放浪息子
性同一性障害という病気がもたらす本人のみならず、
家族や社会との葛藤をテーマにしました。
ナイーブな問題だけれども、想定できる問題や衝突を
余すことなくタブー視しないで問題提議をします。
皆さんの評価は高いので、口はばったいのですが、
全巻を読んだ正直な感想です。
背景を理解するための1巻と結着の15巻の間の
13巻分のお話は、毎号毎巻同じ繰り返しに感じてしまいました。
プロセスの進展はほとんどありません。
周辺の同じ思いを持つ男女、姉、母、女友達の優しい
共感と彼ら同士の反発の繰り返しです。
やや退屈さを感じるほどの行きつ戻りつを繰り返すのが残念です。
また、画は可愛いのですが、人物の描き分けが苦手な
ようで、十人くらいのサブキャラはほとんど誰だか
わからないまま話しが進んでいった感じでした。
まあ、それでも問題ない展開も困ったものですが。
面白いのは、主人公を取り巻く男友達のほとんどは、
無邪気な攻撃を仕掛けてくる敵ですね。
男社会が絶対敵だと理解できます。
要するにオンナ世界になれば、救われる男も沢山
いることを男は知るべきですね。
つまるところ、本当の自分をさらけ出したい欲求と社会と
どのように折り合いをつけていくかの問題なんですよ。
繊細な心を持つ人間は、獣がいる社会では生きていけません。
繊細な世界を好む人たちに守られた駕籠の中の世界だけが、
彼らの住処という結論かと理解しました。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2019-06-09 14:55:45] [修正:2019-06-09 14:55:45] [このレビューのURL]