「橙木犀」さんのページ

戦国の世を己の才と教養でしなやかに生きた、謎の美女・小野於通。
美貌と才智に恵まれ、幾多の知識と教養を己のものとし、様々な美を理解しつつ自らも創造する。
決して身分高くはない武家の出身ながら、時の最高権力者たちから信頼され重用されつつ、更に公家社会に溶け込み、その中で学び得た優れた趣味教養で公家の社会でも高い評価を得ていく。
なんて素晴らしい女性なんだろうと読み進む度に溜め息が思わず出てしまいました。史実ではどんな女性だったんだろうとちょっと調べてみると、実際に様々な伝説に彩られた、そして多くの謎に満ちた人だったことが分かり、また吃驚です。
あれだけの諸説をこれだけしっかりと一つの物語にまとめあげ、魅力的な少女の姿を生み出すなんて、さすがは大和和紀先生だな?と思わずにいられません。
安土桃山時代が主な舞台なので、大河ドラマや時代劇、歴史小説で有名な人物がバンバン出てきますが、その全てが血の通った一人の人間として描かれ、「ああ、この人はこんな人だったんだろうな」と自然に感じられるのが心地良いです。特に、私は茶々の描写に驚かされました。今まで様々な作品で見たり読んだりしてきた中で一番魅力的に感じられたからです。利発で愛らしく、誇り高く勝ち気で、そして大胆な野望を胸の奥に秘める…。
3巻まで読んでなんとなく、於通が表の主人公なら裏主人公は茶々なのではないかと思えてきました。同い年の二人の女性の人生がこれからどのように紡がれていくのか、そして於通の人生がどのように彩られていくのか、これから先も楽しみでなりません。

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[投稿:2011-08-04 23:12:57] [修正:2011-08-04 23:12:57]