「あおはな」さんのページ
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- お気に入り漫画が次々に完結して少しシュールだなとおもいきや、また新連載が次々に開始されて・・・あーよかった。最近はそんな毎日です。

9点 G戦場ヘヴンズドア
「バクマン」や島本作品等に代表される「漫画家を目指す主人公の成長と知識漫画」ということを期待して本作品をお読みになれば肩透かしを喰らうかもしれません。
もちろんそういった記述がないではありませんが、本書で述べられているのはどちらかと言えば業界的、技術的なものではなくてメンタル面の心構え的なものが多いです。(「漫画は修練するものではない。覚醒するものだ」など)
「狂気について」の記述が漫画精神論のオブラートに包んだ本作の隠れたテーマのひとつであろうことが関連しているんでしょう。(巻末の戸川純の「赤い戦車」歌詞のセレクトが松本大洋「ピンポン」の「血って鉄の味がする」とフィードバックしてしまうときがあります。)
作者の哲学的な主張がにおいすぎている本作以前の日本橋作品を読んでおられる(ある種かなりマニアな部類の)読者の皆様はこのアタリの意味がかなり理解していただけるのではないでしょうか?そういった意味で日本橋作品は松本大洋、古谷実後期作品、バガボンド(井上先生)蒼天航路(王先生)シグルイ(山口先生)の系譜に限りなく近いといえるかも知れません。
日本橋先生の作品は「交錯する人間心理の神経質なほどの描写」「スクランブル(三角関係など)における「退き」の美学=ダンディズム」(からくりサーカスの勝の恋愛論みたいな)「主役が誰だか分からなくなっても読めてしまう漫画セオリーの掟破り」などかなり際立った独特な特徴があります。本作は3巻というコンパクトさでそれらが凝縮された良作であると思います。「家族」「繋がり」についての執拗なまでのこだわり、でも必要以上にべたつかない。そしてなにか不思議な余韻が残ります。
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[投稿:2010-11-13 15:34:40] [修正:2010-11-13 15:48:46]