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宮崎駿の漫画史に残るであろう名作ファンタジー。何度も何度も読み返した漫画だが、この作品にはそれだけ深く、多面的な魅力を持っている。

・純粋なファンタジーとしてのおもしろさ
ファンタジーの王道ともいえる世界の謎を解き明かしていく物語。この点でナウシカは他の同ジャンルの漫画のどれよりも傑出している。腐海の意味、人類の成り立ち、謎が新たな謎を呼び、最終的に驚くべき真実にたどり着く。わくわくするしかないでしょう。
魔法的なそういう意味でのファンタジックな世界ではないにしろ世界の仕組みにこれ程興味を惹かれた物語はなかった。うまく構築されているというだけでなく、それが直接宮崎駿の思想を表現するものであることは奇跡的ですらあるように思う。

・独創的な世界観
飛行機、腐海、虫、食べ物、服装など細部に至るまで工夫された宮崎駿の造形物たち。創造力がすごすぎる。精密な絵も相まってナウシカ独特の世界観を創りあげています。美しいものと醜いものが同居するナウシカの世界、気づけば魅力的な物語の中に入り込んでしまう。

・メッセージ性の強さ
映画版のメインテーマだった環境との共生は原作では序盤で軽く触れられるのみに留まる。そもそも映画版での環境が環境の外に人間があるという認識だったのに対し、原作での環境とは私達人間が生命の輪の中に組み込まれたものになっている。腐海やオームの成り立ちも含めた人間の干渉込みでそれもまた環境だよという大きな意味で捉えられている時点で共生という言葉が成立しない。私達もその一部なんだから。
原作でのメインテーマは宮崎駿の思想論・生命論だろうか。連載が長期に渡ったためか途中よく分からない所もあるためラスト付近について考えてみる。

ナウシカは作中の多くの場面で葛藤する。
ナウシカは墓所の主への言葉のように清濁合わせ持つ世界、闇の中に光のある世界を肯定し、墓所の主のような、神聖皇帝のような一つのルールを押し通すようなやり方を否定する。しかしナウシカは彼らを否定するために結局多くの兵士や墓所の主を殺し、自分のルールを押し通してしまう。この矛盾のためにナウシカを嫌う人もいるだろう。しかし考え、葛藤し、矛盾を受け入れながら生きて行く姿勢が大事だと私は思う(ここは銃夢にも共通する所)。
作中でナウシカが唯一の神を否定し、一枚の葉や一匹の虫にも神は宿っているというように多くの価値観を受け入れた生き方が示唆されているのかもしれない。

宮崎駿の生命についての考え方も興味深い。
神聖皇帝は治世の最初は名君だったものの、政治のために利用した神に彼自身が囚われることになる。ただ生きることに意味が見出せなくなり、神によって命に価値を与えられることになってしまうのだ。墓所の主も同様、次世代の清浄さに耐えうる人間のつなぎとしてのみ今の人類に意味を見出している。しかしナウシカはただ生きるというだけで価値があるのだという。例え組み替えられたり、造られた命であっても生きてきたことに意味があり、変化し続けていくのだと。

神や墓所の主のような他者によって自分の命に価値を与えられるのではなく、自分で生きる意味を見出すこと。多くの価値観を受け入れること。言うのは簡単ですが、弱く流されやすい人間にとっては非常に難しいことです。だからこそ強く、全てを受容する優しさを持つナウシカは聖母なのだと思います。

人間の卵をナウシカがどう考えて壊したかということは気になる所。生命と考えてなかったのか、それとも人間が生存するためとはいえ違うものに変質することが生きることと思えなかったのか…。ここらへんは宮崎駿の「生きる」とはどういうことなのかという考えを見れておもしろい。最終的に人間をどう変化させるつもりだったかは明かして欲しかった。音楽と詩を愛するニュータイプの人間の素材に今の人間を使うという感じなのか?…

母神のようなナウシカにはなれずともその生き方に価値を見出すことはできます。最後に少しだけ衣が青くなったジィ達のように少しでも近づくことは出来るはずです。

長くなりましたが、もちろんこれは私の解釈です。読む人によって思う所が異なり、読むたびに新しい発見がある風の谷のナウシカは時の審判に耐え、後に長く残る作品だと思います。
欠点といえば難解、かつマルクス主義や哲学的な知識が散りばめられていて非常に読みにくく、疲れること。また漫画的な演出はいまひとつかもしれない。
紙質とインクの悪さなど違う部分で気になる面もありつつもそれらを補って余りありすぎる魅力がある作品です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-08-03 02:38:09] [修正:2011-08-04 16:00:02] [このレビューのURL]

10点 寄生獣

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-14 11:00:56] [修正:2011-08-03 16:23:12] [このレビューのURL]

人と龍が共存している架空世界における<帝国>と<皇国>の戦争を描いた架空戦記。
全5巻という凝縮された作品にもかかわらずこんなにしびれた作品は初めてだった。
流麗な台詞回し、綿密な軍事描写、押し殺した感情まで読み取れるほど力強い絵、戦術に対する深い考察と駆け引きに、魅力的な登場人物たち。
そのどれもがリアルに描かれていて今まで見た戦争系コミックの中で
ズバ抜けて1番だと個人的には思う。まさに非の打ち所がない作品である。
是非ともその衝撃を自分の目で確かめて欲しい。
おすすめです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-07-30 14:21:09] [修正:2011-08-01 23:19:08] [このレビューのURL]

あまりにも自分の一部になりすぎて客観的にはとても見れない作品。直接関係ない語りもあるし、非常に長いので不快な方は飛ばしてくだされ。

「原始の生命は濃厚な有機物のスープから生まれた。新しいものは常に混沌から生まれる。」どこかで見て(火の鳥か?)心に残った言葉。まさにディスコミのことのようです。
民俗学・哲学・宗教・オールド玩具などへの愛に満ちた書き込みと世界観、恋愛を上記の要素を絡めてある意味回りくどく表現するストーリーが特徴の個性的すぎる作品。摩訶不思議恋愛漫画とよく紹介されます。

私が読んだのは小学校低学年の頃。この頃姉の本棚に入っていたディスコミやスラムダンク、ジョジョ、るろ剣、赤僕などから私の漫画ライフは始まった。うん、いい漫画ばかり。
そんな良漫画の中に異彩を放つディスコミには強烈な衝撃を受けた。他の漫画と異質も異質で、意味が分からない所もたくさんあったのにとにかく夢中になって読んだ。何しろあまりにも変態的(エロではないよ)なのでイケないものを読んでいるような背徳感というかそういうドキドキがあって、そういう意味でも思い出深い作品です。
今の私を考えるに、漫画の嗜好から服など装飾的なセンスまで色んな所が血肉になっています。良かったのか悪かったのか分からないけれども、ディスコミに出会わなかったら今の自分はないでしょう。小さいうちに出会えたことに感謝。

少し内容紹介。ディスコミは導入編、冥界編、学園編、内宇宙編に分かれている。
導入編…主人公の戸川とその彼氏松笛の紹介も兼ねた2人を中心としたエピソード群。戸川と松笛が付き合うことになったきっかけやその少しアブノーマルな日常が語られる。歓喜天などの密教や神話を絡めた幻想的な話が多い。松笛の不思議さと戸川の松笛の謎を解きたいという気持ちが押し出されて、謎の彼氏Xとでもいえるような仕上がりになっている。こちらは人間じゃないかもしれないくらい謎ですが…。導入編ではまだ絵が荒いものの、独特の美しい絵と話が印象的です。

冥界編…謎の2人組に冥界に落とされた松笛を助けるために戸川も冥界に飛び立つ。冥界編はディスコミの中でもかなり異質で、長期間自分の内面世界と向き合う真摯な話となっている。「なぜ人は人を好きになるのか」、ディスコミ全編でのテーマでもあるこのテーマに冥界編では真っ向から取り組んでおり、独創的だが重い展開が続きます。
自分の内面を追求することは辛く、先の見えない作業ゆえに人は壁にぶち当たる。その時「あきらめをもたらす者」を象徴してか、戦闘シーンも読み応えがあるものに。この結末はとても良かった。名編です。

学園編…前後編に分かれる。冥界編とは打って変わってとにかくコミカル。個性的なギャグが冴え渡っている。前期後期共に何か悩みを持つ男女が松笛と戸川に解決を求めてきて、オカルティックな道具や解釈で彼らを悩みから解放していくという筋立ては共通している。冥界編で分かりにくいと読者に言われたことから学園編では自分が分かる話しか書かないようにしたそうで非常に読みやすい。この学園編、特に11巻はディスコミの中でも屈指の作品群。
前期学園編でのテーマは性的倒錯だろうか。変に思えるかもしれないが、恐らく真面目に取り組んでるので意外に興味深い。後期学園編のげに尊きは彼女のふくらみからは霊感少年少女を鍵としたシリアスなテーマ性を持った作品となっており、絵柄も一変する。Dr.Strangeloveさんと同意だが、特に天使が朝来るは傑作。夢の扉も良かった。

内宇宙編…前半はエロい。とにかくエロい。直接的なエロさはあまりないにも関わらず下手なエロ漫画よりよっぽど。性を通して自分の心と世界を描いている章ですが、危ないネタがいっぱいで真に変態的な話が多いのでここで引いちゃう人も多いかも。そろそろ読者も自分も分からないような話を書いていいかな」ということで、読者が置いてけぼりになりがちな内宇宙編ではあるけれど考えさせられるのは確かです。
後半は前期学園編や導入編が混ざったような話になる。各エピソードの主役が話を盛り上げ、戸川と松笛は脇役といってもいいくらいの位置づけに。けっこう異常な話のはずなのに全く気にならない。もはや倒錯的な恋愛を当然のように肯定し、憧れさえもたせてしまう変態植芝には脱帽です。でも少しは自分の中にそんな面があるはずだよね。

大好きな作品ですが、決して万人向けではないことは断言しておきます。映画で例えるなら、ショーシャンクの空にのように万人が認める名作ではありません。パルプ・フィクションのような中毒性はあるものの好き嫌いが分かれる名作です。
私のレビューで上の方にランクインしてしまいますが、こんな得点をとる作品じゃないだのと他人の評価に文句をつける方が現れないことを祈っています。当然ですが、自分の価値観は必ずしも一般的な価値観ではありません。一元的な見方をしてしまう人には合わないだろうなと思いつつもそんな人にこそディスコミュニケーション(相互不理解)を読み込んでくれたらいいなと思うのです。
この美しいまでの混沌、とにかくご一読あれ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-07-20 02:18:36] [修正:2011-08-01 15:34:37] [このレビューのURL]

人生に影響するとか書かれちゃうと躊躇してしまうが、読んだ漫画の中でも輝いて魅力のある作品だと思います。
自分自身はギャグ漫画はあまり好きではないのだが、この作品の笑いの壺はすさまじいです。
ギャグ漫画1位です。
この漫画を読んで考える事なんかないし、下品だし、しょうもない内容なんだけど、そもそも漫画ってこういうもんだよな!って言えてしまう内容でしょう。
無人島に持っていく漫画って質問なら、この漫画を選ぶかもしれません。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-07-31 02:44:39] [修正:2011-07-31 02:44:39] [このレビューのURL]

10点 寄生獣

とにかく完璧。
凄まじいまでの伏線はもちろん、
深すぎるテーマにしっかりと答えを出し、投げっぱなしにしない作者の力量は、漫画界でも間違いなくトップクラスでしょう。

よくわからない、書ききれていないなどという意見も目にしますが、
2回3回と読めば、すべての答えが書かれているということに気づくはず。

「好みじゃない」というのはいいとして、この漫画を「深みがない」という人は、よっぽど読解力がないのでしょう。
そう言い切ってしまえるほど完璧。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-07-30 12:59:41] [修正:2011-07-30 12:59:41] [このレビューのURL]

10点 ピンポン

私の中ではスポーツ漫画の比類なき名作として君臨している作品。色んな意味で2つとない作品と断言できる。
ネタバレ成分大なので未読の方は注意するようお願いします。

・主題に則った無駄の無いストーリー
表のテーマはヒーロー。主人公ペコの再生が描かれる。
ドラゴン戦での頭上を鳥が飛んでいくシーンが示すようにヒーローとは他の凡百の者たちの上の空を高く飛んで飛翔し、違う景色を見せてくれる存在。
作中屈指の名シーンであるドラゴンがトイレにこもる場面でドラゴンは自問自答する。誰のために、何のために卓球をするのか、必死に練習して勝ち続けることに意味はあるのか…。ペコはドラゴンを彼の見る景色まで連れて行く。そこでは意味はなくなり、残るのは卓球をすることの純粋な喜びと楽しさだけ。
だからこその「怯える暇などない。怯える必要などないのだ!」「此処はいい。」というドラゴンの満たされた思い。一巻分にも満たない長くはない試合にスラムダンクの山王戦をも越える圧倒的な密度の感情と叫びがつめられている。
裏のテーマはヒーローではない凡人達。
松本大洋は敗北者に優しい。とはいっても努力はいつか報われるなんて見当違いなことを言うわけじゃない。試合に負けて落ち込む孔文革をコーチは諭す。全てを費やした上で挫折したとしても、それでも人生は長く、いつだってスタートラインに立てるのだよと。
ピンポンに凡人はたくさん登場する。アクマや孔文革はもちろん、究極的にはドラゴンさえそうかもしれない。現実的に天才は一握りで、大多数は凡人だろうし私も後者だろう。ピンポンの最後のスマイルとドラゴンの会話からすると松本大洋が本当に書きたかったのは凡庸の救済だったのかもしれない。彼らがみんな居場所を見つけられたのは本当に嬉しかったし、コーチの台詞には私も救われたように思う。

・松本大洋のぶっとんだセンス
擬音といい台詞といいこの人のセンスは荒木飛呂彦並みにぶっとんでる。
字体や擬音の置き方が場面場面で独創的すぎるくらいなのに、雰囲気を表すのに最適なものとしか思えない。実際に見ると分かるが凄すぎる。
アクマ、ピンポン、ペコ、ドラゴン、登場人物の全てに名言があるように思えるくらいこの人の言葉選びと会話は印象的なものが多い。特にドラゴン戦はその全てがもうね…。

・熱く、まるで映画のように洗練された試合
松本大洋の個性的なド迫力の絵と擬音による効果音で描かれる試合はドラマチックでありながらもめちゃくちゃ熱い。そして絶妙なタイミングで挟まれる静の場面。激しく動を描いてきた中でのこの間と雰囲気にはぐっとくる。この人の描く表情は言葉以上に雄弁に語るなあ。

濃密な物語とそれを表現しきる松本大洋の世界観。
完全さと勢いを合わせ持ち、これだけ好みの作風となると文句なしの満点。最高です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-07-26 00:58:54] [修正:2011-07-27 03:56:21] [このレビューのURL]

10点 レベルE


やはり冨樫は悔しいが天才。
たったの3巻だが内容が濃厚であり、なおかつおもしろい。

なかにはちょっと悲しい話もあったり

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-07-26 22:09:10] [修正:2011-07-26 22:09:10] [このレビューのURL]

10点 AKIRA

漫画ってすげぇなって初めて思った作品。
また漫画を読み始めるきっかけにもなった作品。
当時はもうセンセーショナルなんてもんじゃなく、一言で言うなら爆発でした。まさに爆発でした。
まるで他の星のマンガでも読んでいるようなあの不思議な感覚は今でも忘れません。
最高の作品です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-07-24 20:42:37] [修正:2011-07-24 20:42:37] [このレビューのURL]

10点 蒼天航路

脚色演出も多少ありますが単純に漫画として面白い。
三国志系では間違いなくこれが1番です。
古本屋に行けば100円コーナーに大量にあるんで、手軽に読めるってのも高ポイント??笑

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-06-26 12:11:20] [修正:2011-07-24 20:25:10] [このレビューのURL]

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