「臼井健士」さんのページ

総レビュー数: 439レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年06月18日

「寄生獣」の作者による古代ギリシャを舞台にした物語。
日本人にとってはホントに馴染みのないお話で、資料収集にしても世界観の構築にしても難しかったろうなあ・・と作者の苦労が偲ばれてしまう。

冒頭、1人の青年が生まれ故郷の町に帰ってくるところから話がスタートする。
主人公にとってはどうやら久しぶりに見る故郷らしい。さぞ懐かしさがこみ上げてくるかと思いきや・・・町はいきなり軍隊に取り囲まれていた(笑)。
このままでは町にも入れない。困り果てる主人公と同じく街に入りたい老女。
そこで、主人公は一計を案じてまんまと町の城門を開かせることに成功する。

久しぶりの我が家・・・は建物からしてなくなっていた(笑)。
主人公はかつての自身の部屋のあった場所で「物思い」に耽る。そして、ここから主人公の幼年編がスタートするのである。

かつては裕福な家のおぼっちゃまであった自分。使用人や奴隷を多く召抱え、父は町の有力者で、母は美人だがどうにも出来のいい自分よりも不出来な兄のほうを可愛がっているような素振りが時折見える。
好きな書物は読み放題。成績も抜群で、兄弟仲はいいとは言えないものの、何不自由もない生活。
いずれは学者にでもなって・・・・などと呑気に構えていた主人公の人生が父の死によって一変する。
父は父を快く思わない連中の謀略で暗殺されていたのだ。そして主人公は自身が両親の実子ではないことを知る。しかも奴隷の息子であることを!
母や兄からも見放され、商人に身を売られて故郷を離れなければならなくなる。

ここから始まる主人公の運命の流転。折しも出航した船は嵐に遭い、木の葉のように浪間を揺れ惑う。
「主人公の嵐の人生の大海原」はここに開幕のベルが鳴ったのであります。
果たして沈没するか、堪えるのか?

「さては、皆様お立ち合い」でございまする?(了)。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-06-18 23:56:47] [修正:2010-06-18 23:56:47] [このレビューのURL]

入学した高校で生まれて初めて「見知らぬ男から告白された」根岸さん。
最初は「変な奴・・・」と思いつつも、自分の気持ちに正直な星野君に徐々に影響されていき(ペースに巻き込まれていき?)、気が付けば「全校公認」の名物カップルに(笑)。

画はまるで「版画作品」のようなぎこちなさで、ラブストーリーだというのに「いやらしさ」は皆無。
少年漫画版「ハツカレ」ともいうべき、ぎこちない2人を包む空気と星野の「ボケ」に対する根岸の「ツッコミ」が個性になっています。最終的には身も心もひとつになった2人。全5巻は短すぎるとも思うのですが、愛が成就した2人の未来に幸あれと思えるラストに感動もひとしお。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-06-18 23:47:02] [修正:2010-06-18 23:47:02] [このレビューのURL]

単行本累計「6千万部突破」の史上最も売れた少女漫画だ。

で・・・内容はというとナルホド確かに面白い。
学園を牛耳るお金持ちのボンボン息子・4人組に目を付けられた庶民の女の子(主人公)はイジメに立ち向かう・・・・はずだったのだが、何と当初の敵のはずの4人組のリーダーが主人公を好きになってしまったことから事態はややこしいことになっていく。

価値観も金銭感覚もまるで違う2人が恋をするのだから全てにおいてトラブル続き。
オマケにお互いに恋愛経験はなく、全てが手探り状態の中での意地の張り合いにも「似た者同士感」が表れ、いちいち事情を複雑化させていく。
ジェットコースター的な展開が絶妙。

魅力は何と言っても、道明寺がつくしを好きになっていく中で「乱暴でワガママなお坊ちゃん」から脱皮して「人を愛することの出来る優しい男」になっていくという点だと思う。
自分が生まれ育った環境に胡坐を掻き、「金が全て」という価値観しかなかった男が、恋を知り愛を体験する過程で「つくし以外の他人さえも」思い遣れるような優しさを身に付けていくのだ。
道明寺をそういう男に生まれ変わらせたつくしの魅力も絶大で、正に「イイ女は男をも変える」という証明か。

そして終盤ではつくし自身も大人になった道明寺に影響を受けて大きく成長する相乗効果。
「恋も愛も知らなかった少女」もサナギから脱皮して美しい羽を広げることとなった。

マーガレット連載作品でここまでの巻数が続いた作品はザラに無い。
というか連載中はおそらくはこの作品だけが飛び抜けて面白かったというのが正直なところではないか?
画も初期は描き慣れていない印象だが、中盤以降は安定し、男性が見ても見やすいクセの抜けた綺麗な絵になった。
ストーリーはつくしと道明寺の明るい未来を予感させて終わるが、どうやら続編がありそう。
引っ張り過ぎ・・と思いつつも、完全決着の見たくなる作品。


「美作」の存在感の薄さを皆さん、言われているので。

確かに「美作」はF4の中で1人だけこれといった出番がなかったですね。
しかし・・・それも考えてみたら当然かも。他の3人は「家庭環境」にそれぞれ問題がある(「家族と不仲」)ため、精神的に自身を確立する上で根本的な部分で満たされていない。それゆえ、その満たされない不満が屈折した形で「暴力」や「放蕩」や「無関心」という形に姿を変えて発散されていた。

その3人に対して美作は4人の中で1人だけ家族仲が悪くない。
むしろ仲が良すぎて、美作は逆に家族が苦手になるほどだった。しかし、彼の生来の気質(頼られるとついつい世話を焼いてしまうとか、周囲に気を使うとか、他人を立てるとか)があるため、面と向かって拒絶することも出来ない・・・っていう意味では、本人も葛藤を抱えていて、それをつくしに「不本意だけどね」と語っている。
兄弟構成という点で見ても、彼は4人の中でただ1人「長男で、お兄ちゃん」だった。
司は長男だが弟。総二郎は三兄弟の真ん中で次男。類も長男だが、1人っ子なので下の面倒を見るという経験を積んでいない。
兄弟構成を見ても彼が面倒見が良くなった理由が示唆されている。

ただ、F4の中で1番地味と言っても、それは「あくまでもF4の中で」の話。
上記の理由から基本的に「唯我独尊」の性格となってしまった他の3人は、F4以外のグループに属することが出来ない。(最初は周囲からチヤホヤされたとしても、やがて他人が付いていけなくなって最後には孤立してしまう。)

それに対して、美作は別にF4でなくても集団に馴染み、周囲の人間と上手く付き合っていけるはずだ。
・・・・というか、「F4以外のグループ」だったら彼がリーダーになっていることだろう。
本人もそれは理解しているはずである。
それを分かっていながら、敢て「最も地味な立ち位置についている」ところが彼の優しさであり、良さなんだろう。
傍から見たら、騒がれ憧れられる「F4」も彼がいなくては集団として成り立つことすら難しい。
悪く言えば「自分勝手」な他の3人の間を上手く調整しているのは常に美作だった。

他の集団に属せばリーダーになれるのに、敢て「F4で最も地味な役柄をこなす」のは他の3人の孤独を知っていたからに相違ない。それは、つくしも理解していた。

結局、最後の最後まで「主役」としてスポットライトを浴びることはなかった彼だけれど(申し訳程度に「番外編」が語られたが・・・)、裏方に回って他の3人を立て続けた姿勢は「彼の人間性」を象徴していると思う。

そして美作自身も今はそんな自身の生き方に葛藤を抱えてはいるものの、いつかそれを「自分の生き方」として納得できるんじゃないかなとも思う。
誰に自慢するわけでもないけれど、それってカッコイイことじゃないだろうか?

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-06-18 23:43:59] [修正:2010-06-18 23:43:59] [このレビューのURL]

羅川先生の出世作。少女漫画だが、恋愛を話の主題に置かないホームドラマなので男性でも読みやすい。
榎木家はお母さんが次男の実をかばって交通事故で亡くなり、長男の拓也とお父さんの3人家族。
小学校高学年の拓也は弟の母親代わりも務めて日々奮闘しなければならなくなる・・・・。
と書くと単なる「お涙頂戴」的な話かと思われがちだが、しかし内容は「日常生活の中に潜む様々な事件」を浮き彫りにし、しかもそれが多岐に渡って決して「子供向き」とは言い切れない。
笑って、ほんわかして、考えされられて、そして最後にはしっかり泣ける・・・そんな漫画。

位置付けでは「少女漫画」に振り分けられてはいますが、実態は「老若男女」で読者を分けない漫画と断言できます。絵としても見やすいです。「少女漫画」っぽすぎないので男性でも入りやすい。

内容も小学生を主人公としながら、日常に潜む様々な事件を浮き彫りにする作者の手管が冴え渡ります。
恋愛要素は薄いですが、拓也と実の両親が出会って恋に落ちる話はその薄い「恋愛要素」を全開にしての感動的なお話に仕上がっています。

設定が似たもので女の子の姉妹が主人公の「くじらの親子」(くりた陸・作)と併せてオススメします。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-18 22:01:46] [修正:2010-06-18 22:01:46] [このレビューのURL]

竜馬漫画の最高峰。原作はあの竜馬命の武田鉄矢だ(笑)

多少フィクションも入ってはいるものの、幕末の歴史を詳細に知りたいという方も読んで損はない。
竜馬の幼馴染「人斬り以蔵」こと岡田以蔵がやたらといい奴に描かれているため、処刑シーンは胸がつまる。
でも、もし船酔いが無かったら以蔵も死なずに済んでた・・・・・って訳でもなかろうに。逆に竜馬や海舟といった素晴らしい人物が傍にいたにもかかわらず、たいして影響も受けることなく、どうして武市の道具として使われてしまったのかが謎。考えることが苦手で「剣の腕だけが」飛び抜けていたため、いいように使われてしまったということなのだろうか。
竜馬にはあった政治的な思想というものが以蔵には皆無だった。立場は異なったが武市も思想は持っていた。信念を貫いたものと貫けなかったものと。結果は同じ「死」であっても意味合いは大きく異なると現代に生きる我々にも伝わるものはある。

ところで「加代さん」って実在の人物?

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-18 21:50:03] [修正:2010-06-18 21:50:03] [このレビューのURL]

久米田先生の最新作。

前作の「せっかち伯爵と時間泥棒」が残念な結果に終わりましたが、やはり「下ネタ復活」させたのは時代に逆行していたんでしょう。
もうそういう時代ではないし、そもそも久米田先生はそんなことしなくてもちゃんと描ける方なので何故今更そんな作風に回帰したのか謎。

さて、新作は「漫画家の男性」を主人公にして可愛い娘に自分が漫画家であることを知られないように奮闘する日々が描かれます。
「隠し事」=「描く仕事」なわけです。
あるあるネタの機関銃攻撃はこの作品では出さないようです。

冒頭と巻末とで本編の十数年後を挟む構成は完結への壮大な布石のような気もしますね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-12-29 21:56:32] [修正:2022-05-14 10:08:38] [このレビューのURL]

近未来の日本の横浜で、喫茶店を営む雇われ店長のアルファさん(女性型アンドロイド)を主人公に、
何気ない日常風景を描いた「紀行漫画」?

何と未来の日本は今よりも水面が上昇して低地は海に飲み込まれてしまっているらしい。
そのため、神奈川県の横浜も今よりずっと海岸線が後退して来ている。
女性型アンドロイドのアルファさんは外見は人間の女性と変わらない。
普通に食事だってするし、車やバイクの運転もこなすし、お風呂にだって入るし泳ぎもOK。
でも彼女は歳をとらないから、外見がずっと変わらない。

近所に住んでいる人間たちは皆、時間経過と共に年齢を重ねていく。
だけど、アルファさんたちアンドロイドはそのまま・・・・・・・・・。
それはアンドロイドと人間が同じような生活をしながらも
「別の時間軸」に生きていて、やがて決定的な別れが来ることを微かに意識させる。

おそらくは大都市であったはずの関東沿岸部も大きなビル群の描写は見られず、
人口は現在よりも大きく減少していると思われる。

作品としてのテーマは「時の流れ」だと思う。
どんなに日常が何気なく、何も起こらない1日が続いたとしても、
時間はその歩を止めることはなく、確実に流れているのだと意識される。
「その残酷さや儚さをオブラートに包み込んで」私たちに見せ付けてくれる。

とにかく「他に類を見ない作風」の独特の漫画。
メジャーな週刊誌では絶対にこういう作品は生まれなかったであろうと感じられる。
「特別な何かが起きる!」と期待して読むなかれ。
この作品は「そういう期待」を持って読む漫画に非ず。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-06-19 00:04:09] [修正:2022-05-14 10:06:50] [このレビューのURL]

格闘漫画の最高峰・・・とは言いませんが、それに近い位置にはいると思われる作品です。

実在の人物をモデルにしたと思われる異種格闘技の戦士たちと主人公の戦いの数々は、紙一重の差で勝利したと思われる者が、次の試合でアッサリと「それ以上の力を持つ者」によって倒されたりする贅沢な展開。

父と子の「宿命の対立」という縦軸も、格闘という横軸と共に作品世界を構築する上で効果的だ。

問題点は・・・その「主人公の父親」が強すぎること・・・。
「地上最強の生物」だのホッキョクグマを素手で倒すだのと、生命を持った核兵器のような扱いで、倒しようがない。

だからサンデー連載の「うしおととら」と同じく「最強の敵」が当初から決まっているはずなのに・・・なぜか連載がいつまでもダラダラと続いてしまい、終結の糸口が見えてこない。

次シリーズ、その次・・・と続いているようだが、いつの間にか読むのを止めてしまった。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-07-03 10:02:57] [修正:2022-05-14 10:06:07] [このレビューのURL]

7点 SLAM DUNK

バスケ漫画の頂点でしょう。少なくとも現状では画力・構成力・見せ方ともにこの作品を超えるものは無い。

人気を考えても、もっと連載を続けられたはずだが・・・全国大会の優勝なんてまだまだの段階での終了。
だからストーリー的に「中途半端」な印象は避けられませんが・・「井上先生の英断」が、ジャンプの引き伸ばしに次ぐ引き伸ばしでの「見る影もない駄作化」を回避したと好意的に捉えています。
一応、「一区切り」にはなっていますので。

続編は・・・望む声は多くとも描かないほうがいいと思います。評価を下げる危険が大きい。
ファンは空想の中で「それぞれのその後」を楽しむのが「吉」と出ております。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-07-31 07:21:26] [修正:2022-05-14 10:05:07] [このレビューのURL]

中学生男子の隣の家に転校してきた無口な女の子。
同じクラスで隣の席だから話し掛けてみたけどなかなか会話が続かない。
どうしたものかと思っていたらその女の子からある日呼び出しが。
愛の告白ではなく・・・私と幼馴染設定やって下さい!だって。

幼馴染の男女が繰り広げるボーイ・ミーツ・ガールは恋愛の定番だが、実際はそんなに都合よく幼馴染の男女にはならない。
漫画やアニメでは都合よくお隣同士・・・なんてことはない。
それならば「幼馴染設定やってみよう!」というのがこの漫画。
どことなく男女の雰囲気が「からかい上手の高木さん」に似たものがあり、派生系とも言えなくもない。
ここから関係が深まり恋人同士にという流れか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2022-05-10 10:14:55] [修正:2022-05-12 23:40:11] [このレビューのURL]